第61章 約束の地へ(16)
「そろそろワームホールが出現する……時間です」
佐助の言葉に、俺は開いていた手を力強く握りしめる。微かに強まった風を感じながら、石碑の近くまで移動。
「約束の地」
俺はその文字を心の中で呟き、目を伏せた。
あれは、戦に行く前日だった。ひまりの部屋でしばらく会えなくなる淋しさを埋めるように、求め合った後……。
ーー戦から戻れば、しばらくは時間取れるから……ひまりの行きたい所、連れてってあげる。
ーーほんと?う〜ん、それなら……あの野原にある花畑に行きたい!
ーー花畑って……そんな所でいいの?
ーーうんっ!だって、あそこは私達の思い出の場所だから。
家康が帰ってくるの
ちゃんと、待ってるから……。
『約束だよ』
(……ちゃんと、待ってなかったけどね)
俺は石碑に触れながら、思わず口元が緩んだ。
(だから、今度は俺が待ってるから……)
俺はその場にしゃがみ込み、
風に揺れる花を一輪見つめる。
「……ひまり」
誰にも聞こえないぐらいの
声で、愛しい名前を呼んだ……。