第60章 約束の地へ(15)
財布と携帯だけ持った私は、急いで近くにいたタクシーに乗り込む。
「すいませんっ!京都にある、本能寺の遺跡がある所までお願いします!!」
「へっ!京都っ!……って!お客さんなんだその格好はっ!!」
「色々事情があって……出来るだけ早く、お願いします!!どうしても夜までに行きたいんですっ!!」
電車で乗り換えや時間を気にするよりも、車の方が早くたどり着けると思った私は運転手さんに頭を下げる。
「今は大事な時期ですから、なるべく安静にして下さいね」
図書館で倒れた時、病院で看護婦さんに言われた言葉を思い出す。階段の昇り降りや、混雑した車内で身体に負担をかけるのは、避けたい。
必死にお願いすると運転手さんは地図を広げ、渋滞を避けながら最短で行けるルートを考えてくれた。
「遠回りかもしれないが、これなら間に合うはずだ!乗りなっ!」
「ありがとうございますっ!」
私は車内に乗り込むのと同時に、ドアが閉まり車が動き出す。
ーーワームホールは、一定の周期で出現している可能性が高い。
タイムスリップしてまだ間もない頃、佐助君は確かにそう言っていた。タイムスリップした日から、向こうの世界に居た期間は三ヶ月。そして、今日がこの世界に戻ってきてから三ヶ月……。もしワームホールが出現する周期が三ヶ月間なら……可能性はきっとあるはず。
そう思って私は、
祈るように手を組み車外を見つめる。
(可能性がある限り……)
私は、絶対に諦めない。
そう、心に固く誓いながら。