第59章 約束の地へ(14)
(あの時………)
生きて
必ず生きぬいて
大好きだよ
バイバイ
「確か……ばいばい、って」
俺が思い出しながら声に出すと、佐助は話を続ける。
「……そうです。彼女はさようならではなくあえて、バイバイと言った。この時代の人には、馴染みのない言葉で別れを告げました。バイバイとさようならは、同じ意味ですが……」
ひまり達のいる世界では、使い分けて使うことが一般的に多い。と、佐助は教えてくれる。
「さようならは永久の別れや、遠くに行く時に使い……バイバイはまたね、いつか会える、などの意味で使われます」
あの時のひまりさんの状況なら、
「さようなら」を使うはず。
「なのに彼女はあえて使わず、笑顔でバイバイと言った……あなたに別れを告げるのが、辛かっただけかもしれませんが……それでもまた、会えると。期待を込めた……俺には……そんな風に見えました。ただ、それだけで根拠なんて何処にもありませんが……」
彼女なら、きっと最後まで諦めない。
そう思っただけです。
佐助は最後にそう力強い声で言うと、少しだけ表情を和らげ遠くを見つめた。
(一番の恋敵は……佐助なのかもしれないな)
そんな事を考えながら、羽織の裾に手を入れ腕を組む。俺も同じ様に遠くを見つめ、刻々と迫る時間に……微かな風を感じながら、口を閉ざした。
今度こそ、
俺は……
ひまりの手を掴んでみせる。
何があっても
もう、二度と離さない。
そう、心に固く誓った。