第59章 約束の地へ(14)
夜空に昇った三日月。
それを見上げながら、俺たちは佐助が予測した時間まで、じっと待つ事にした。
「……佐助は解るとして、何で幸村までここにいるわけ?」
俺がそう文句を言うと、幸村は眉間にしわを寄せ、石碑の穴を掘った俺が、居たら悪りーのかよっ!と掴みかかって来る。
「お二人共、仲が良いのですね。羨ましい限りです」
「……三成、お前は今すぐ帰れ」
「家康、ひまりの帰りを待ってるのは、お前だけではないことを忘れるなよ?」
三成の隣で、ニヤリと笑う信長様の手には盃が握られ、まるで月見酒を楽しむように口に運んでいた。
「ひまりが戻ったのを確認したら、俺たちは帰ってやるから」
「そうだな、お前達が良い雰囲気なってきたら、邪魔者は消えてやってもいいぜ?」
秀吉さんと政宗さんはそう言って、俺の肩に腕を回す。
「……ひまりのマヌケ面を見るのも、たまには悪くはない」
光秀さんは皮肉を言いながら、目を細め月を見上げた。
(俺なんかよりずっと、ひまりのが凄い)
一か所に戦国武将をこれだけ集め、帰りを心待ちにさせる。
「それよりも、佐助。お前、ひまりなら乗り越えれるとか言ってたけど、なんか根拠でもあんのか?」
お前があんだけ大声出したの、初めて見たぜ?
幸村の言葉に、佐助はほんの一瞬だけ目を閉じ何かを思い出すように上を向く。
「世界に戻る直前、ひまりさんが家康公に言った最後の言葉を、思い出したんだ」
「……最後の言葉?」