第58章 約束の地へ(13)
私がそう言うと、家康は吹き出すように笑って……
ーーぷっ!……一体、何作る気?
ーー家康が想像も出来ないような、衣装!!
ーー……くっ、…まぁ、ひまりらしくて良いんじゃない?
楽しみにしてる。
(家康がそう言ってくれたから……あの日から針子仕事をしながら、色々デザインを考え始めて……)
その日を迎えるのが、楽しみで仕方がなかった。
織田家の正式な姫になる時。
この世界にはもう戻らないと決めた。
ーー自分の気持ちに、嘘はつきたくありません。
側に居ることが例え出来なくても、それでも家康が居る世界にいることが出来るなら……自分の想いを伝えれるなら……それだけで良かった。
(忘れてた……)
一番大切なこと。
私はそっと、自分の身体のある部分に触れる。
(行かなきゃ……)
「ちょっ、ちょっとひまりっ!」
部長の声が背後から聞こえる。
私は壇上から下りて、振り返ると……
「大切な人の所へ、無理やりお嫁に行って来ます!!」
笑顔でそう叫ぶと、外に向かってドアを開けた。