第58章 約束の地へ(13)
会場に着くと、客席には社員以外の人も沢山居て……
私は一気に緊張感に包まれる。
名前を呼ばれ、大きく深呼吸をすると転ばないように気をつけながら、壇上に向かって一段一段、階段を登っていく。
「今回の製作したドレスと、テーマとの関係性についてよろしくお願いします」
「……今回のテーマを聞いた時、実は凄く驚きました」
私は、司会者の人に渡されたマイクを受け取り、心の声を言葉にする。
「時を越えて」
自分の結婚式に着たいと思っていたドレスと、テーマのイメージが一緒だったからです。
着物は、長い歴史の中で受けつがれた……この国が誇る、大切な伝統です。何百年の時が経っても、沢山の人に愛され、伝えてくれる……そんな着物と現代のドレスを組み合わせ、一つの衣装にすることで……
時を越えても
寄り添える、そんな気がして……。
そこで大きく息を吸い込む。
(500年先の未来から来た私と、500年前の過去に居た家康。……そんな私達が愛し合ったように)
「このドレスを着て、偽りのない私を見て……ほし、くっ……て……」
マイクを持つ手が震える。
目頭が熱くなって、流れそうになる涙を必死に堪えようと足に力を入れ、背筋を伸ばす。
あの日___
家康が戦に行く少し前、二人であの店に訪れた時の帰り道。
ーーご主人さんも、女将さんも喜んでくれて良かったね!!
呉服屋さんを出た私達は、手を繋ぎ城下町を歩いた。
ーー……まだ、許しも貰ってないのに、勝手に祝言の話で盛り上がってたけどね。
ーーふふっ、いきなり白装束や色打掛出された時は、さすがに私も驚いたかな?
私がそう言いながら笑うと家康が突然、足を止めて……
もし、祝言が決まったら……って。
ーー……その時は、呉服屋に生地だけ仕入れて貰えばいい
ーーえっ……。
ーー自分で好きなように仕立てて、好きなように着飾れば良いから。
ーーいいの?すっっっごいの作るかもしれないよ?