第55章 約束の地へ(10)※R15
可能性はほぼありません。
佐助の言葉が頭に浮かぶ……
嫌な考えを振り切るように、
額に手を当てる。
すると……
シュルッ……
突然、耳に衣が擦れるような音が届き……顔を上げる。
「一度だけ……一度だけでかまいません」
部屋の蝋燭が妖しく揺れ、何一つ纏っていない女の裸体を照らす。
「………!!」
俺が咄嗟に視線を横に向けると、
女は隣に座り手を腕に巻きつけた。
「好きなんです。今夜だけ、今夜だけ私を、ひまりさんの代わりにっ……」
抱いてください。
《ガタッ!!》
文机が勢い良く倒れる。
俺は着ていた羽織を脱ぐと、
「……い、えやすさん」
身体を横に向け、女の方に手を伸ばした。