第53章 約束の地へ(8)
佐助が大事な話があると言い、石碑を建てた後、俺達は広間に集まる。
「石碑を建てた後に、言いにくいのですが……」
ひまりさんが戻る可能性は、ほぼありません。
(………え)
俺は聞き間違いかと思い、真ん中に座る佐助を見る。その場にいた全員が息を飲むのが解った。
「おいっ、佐助!お前、何言って!!」
「今から説明するから、しばらくの間は黙って聞いてほしい」
幸村が静かになるのを、佐助は確認すると話を始める。
俺は震えそうになる手で拳を作り、足の上にグッと置いた。
「まず、最初に何故、彼女だけが世界に戻されたのか……俺なりに仮説を立ててみました」
恐らく彼女の存在が、歴史を大きく変えてしまう可能性があったからだと思います。
佐助は俺の方に身体を向ける。
「徳川家康を。……この世界は、あなたを失うわけにはいかなかった。現に、ワームホールが乱れ始めたのは、あなたの身が危うくなった時です」
「……なら、俺のせいでひまりは」
「それは違います。あなたの存在は、俺たちの世界に、未来にそれだけ必要不可欠だとゆうことです」
それは彼女も解っていたはず。佐助はそのまま言葉を続け……
「そして、問題は……彼女が記憶を失くしている可能性が高いことです。この短期間で未来から過去に来て、過去から未来に彼女は戻った」
外傷はなくてもそれなりにどこかに必ず負担が掛かる……と話した。