第52章 約束の地へ(7)
部長と別れた後、嘘のように晴れていた青空が一変して、真っ暗な雲が浮かぶ。
アスファルトに滲む水玉模様。
傘を持っていなかった私は突然、降り出した雨に誘われるように近くにあった図書館の中に駆け込んだ。ハンカチを取り出して、濡れたジャケットの肩の部分を拭き取る。
(ちょっとだけ雨宿りさせて貰おうかな)
館内に入るとズラリと並ぶ本棚。それを見て思わず高校時代を思い出す。歴史が苦手だった私は、テスト期間に入ると友達とよく放課後に、地元の小さな図書館に通っていた。
(そう言えば、あの時……)
ーーねぇ、ひまりはどの戦国武将が好き?
ーーえっ?戦国武将??
ーー今回のテスト範囲、ちょうどその時代でしょ?
ーーあんた歴史苦手だからさ、タイプの戦国武将がいたらちょっとは覚える気になるかなぁ〜と、思って。
ーーえ〜〜何それ、そんな理由?う〜〜ん……いきなり言われても、会ったこともないからなぁ……。
ーー私は断然、大うつけの信長様だねっ!
ーー私はやっぱり真田幸村だなぁ〜〜ほら、ひまりは?
ーーう〜〜ん、なら私は……。
(あの後、結局何て答えたんだっけ?)
私は一冊の本を手に取り、パラパラと捲る。
(確かこうやって歴史のページを見てて……)
あるページを見て、私の手はピタリと止まった。
ーーー徳川家康。