第52章 約束の地へ(7)
気持ち良いぐらいに晴れ、雲ひとつない青空が広がったある日。私は部長とショーの打ち合わせしながら、ショッピングを楽しんでいた。
「あなたのドレス楽しみにしてるわよっ」
「はいっ!ありがとうございます!」
「でも、本当に良く間に合わせてくれたわね。しかも一週間も早く完成させるなんて……」
部長は黒いフレームの眼鏡をかけ直しながら、コーヒーを口に運ぶ。
「テーマを聞いて、すぐにデザインが浮かんで……その分早くに、制作の方に取りかかれたので」
私も、ティーカップを両手で持ちながら紅茶を一口飲む。柑橘系の香りが鼻に広がり睡眠不足の身体が癒される。
「あんなテーマで良くすぐに思いついたわね。私だったら、デザイン考えるだけで、一週間ぐらい不眠不休になってる所よ」
「う〜ん、自分でも不思議だったんですけど、私が着たいって思ったドレスとテーマがぴったり当てはまって……」
まだ、着る予定とか全然なかったんですけどね?私が苦笑しながらそう言うと、注文したケーキをモグモグと食べた。
「あいつなんかどう?隣の席の捻くれ者」
「へ……?もしかして、先輩のことですか?」
意地悪だけど、捻くれ者ではないかな?と思いつつ、部長に聞いてみる。
「顔良し、仕事も出来るし、家柄もいいからオススメするわっ!」
「ふふっ、なら部長がお付き合いしたらどうですか?」
美男美女でお似合いですよ?と私が言うと、部長は首を横に振りニヤリと綺麗な笑みを浮かべる。
「誰かさんは、あなたが良いみたいたけど?」
「からかわないで下さい。先輩に怒られますよっ!それに私は今、仕事一筋ですから!」
残念そうに溜息を吐く部長に、私は再び甘いケーキを口に運び、幸せのひと時を感じた。