第51章 約束の地へ(6)
それから数日後___
家康さんを野原で見つけ無視される覚悟で、その人の事を聞いてみた。そしたらまったく反応がなかった今までとは違い、少しずつ質問したら返事が返ってくるようになって……。
「どんな方、ですか?」
「……危なっかしくて、見てるこっちが落ち着かないぐらい無茶ばっかりする、駄々っ子」
家康さんはそう言って、少しだけ笑った。
ある日は___
「お綺麗な方、ですか?」
「……一瞬で男を虜にするぐらいね。……本人は、無自覚だけど」
「そうなんですかっ!いつかお会いしてみたいですっ!」
「……なら、いつか……連れてくるよ」
いつもより声が優しくて。
そしてある日も___
「いつ戻られるのですか?」
「……神様が許してくれたら」
「えっ!!」
「……冗談」
そう言って、綺麗な顔立ちが切なげに揺れるのを見て胸が騒いだ。
「私だったら、家康さんにそんな顔させないのに……」
「……は?」
「じょ、冗談ですっ!ちょっと家康さんの真似してみただけです!」
気づいたらいけない気持ちに、いつの間にか私は気づいてしまった……。
止めなきゃいけないのに、
止まるどころか
どんどん好きになって……
気がつけばいつも
家康さんの背中を探していた。
そして昨日___
俺にしたら、迷惑なだけだから。
はっきりと突き放されてしまった。
耳飾りに触れかけた手が震えて、初めて聞く冷たい声……涙が溢れる前に、その場から逃げてしまった。
(きっと……あの耳飾りは許婚の方の、ひまりさんの物)
触れられるのも嫌なぐらい、家康さんは大切にしてる。
そんなに想われている人に、名前が同じだけの私が勝てるはずなんてない。
でも……
もしも、どうしても、
止められなかったら……
(……想いを伝えるだけなら)
許してくれますか?
私はいつも家康さんが座っている所に腰をかけ、空を見上げた。
それから数日後、父親からある事を告げられ……
私は決心した。