第47章 約束の地へ(2)
「ほんと。……無理、言わないでくれる……?」
届くはずのない独り言を呟いた瞬間だった。
「ちょっと話をするだけだって、な?」
「は、離して下さいっ!!」
「案外、強気じゃねーか。いいじゃねえか、少しぐれぇ」
「や、やめてっ……」
突如現れた、もみ合う男と女。
(……見て見ぬ振りは流石に、出来ないか)
俺は立ち上がり、嫌がる女に言い寄る男の腕を掴み捻りあげ、そのまま後ろに放り投げる。
「痛っ!!な、何すんだ、いきなり!!邪魔すんじゃねぇ!!」
「……先に邪魔したのは、そっち。人が考え事してるのに煩い」
「な、何だとっ!!……ひっ!!」
俺が睨みつけ、鞘に手を掛けると男は短く悲鳴を上げ走り去って行く。
(……ちょっと脅しただけなんだけど)
俺は鞘に触れた手を下ろす。いくら邪魔されたとはいえ、武器を持たない相手に、刀を抜くことはない。
「あ、あのっ!!助けて頂いてありがとうございました」
「……別に。煩くて迷惑だっただけ」
礼を言う女に背を向け歩きだそうとした時だ。突然後ろから羽織の裾を掴まれる。
「わ、私、そこの団子屋の娘でひまりと申します!ぜひ、お礼させて下さい!!」
「………!!」
名前を聞いて思わず女の方に振り返る。
神が二人に与えたのは
天罰だった?
それとも……
二人への試練?
「約束の地へ」向かうのは?