第47章 約束の地へ(2)
俺は安土城に向かう途中、ふと足を止めある場所へと方向を切り替える。野原に辿り着くと、一際目につく黄色い花を一輪摘みその場に座り込んだ。
ひまりが居なくなってから、
もうひと月の時が経っていた。
摘んだ花をただじっと見つめ、
あの後の出来事を思い出す。
信長様達があの後すぐ顕如を捉えるのを、俺はただ呆然と見つめひまりに触れることが出来なかった手を、食い込むぐらい握り締めた。そして集まった今川残党から武器を取り上げ、野に放ち上杉軍とはしばらく休戦に。
ーーひまりが戻り次第、奪いに来る。それまでは、休戦だ
ーー必ず俺がひまりさんを、ここに呼び戻す方法を見つけます。時間は掛かるかもしれませんが……必ず。
上杉と佐助はそう俺に言い、
春日山へと戻って行った。
ーーまさか……お前が今川を野に放つとはな。
信長様に何故かと聞かれ、
「……別に、特に理由はありません」
俺はそう答えた。
憎しみの連鎖を断ち切ることで、何かを見つける事が出来る気がした。戦の先にあるのは死ではなく、誰もが安心して日々を過ごせる世を見て見たくなった。
上杉に捕まり、震える手で護身刀を持つひまりを見て……もう二度とあんな思いをさせたくないと思った。
ーー家康は本当に凄い人なんだよ?
文に書いてあった一言。
(違う……俺はひまりが居たから……)
変われた。
自分の道が見えた。
本当に凄いのは、こんな捻くれ者を受け止めたひまり方だ。居なくなってから、ひまりに触れることが出来なくなってから……俺の中で時は止まったまま。
ーーもし、帰ってくることが出来なかったら……その時は、私のことは忘れて家康が信じる道を突き進んで下さい。
(忘れれる訳がない)
束の間さえも。