• テキストサイズ

イケメン戦国〜天邪鬼な君へ〜

第46章 約束の地へ(1)




「ただいま〜〜」


誰も居ないのについ実家暮らしの癖が抜けない私は、そう言って玄関の電気を点ける。机の上に荷物を下ろし、スーパーで買った材料だけキッチンに運び、晩御飯を作り始める。



「後は仕上げに……」



私は冷蔵庫からワサビを取り出し、蕎麦の上に乗せる。


「やっぱり蕎麦にはワサビはかかせ…な……い」




(………え)



まだ食べてもいない。なのに、鼻がツンとしたように感じて涙が流れる。







ーー……食べないんだ、ワサビ。






(っ……!!)




頭の中に一瞬だけ誰かの声が浮かぶ。


締め付けられるように苦しい胸を抑えながら、その場にしゃがみ込み蹲った。ドクドクする胸を押さえて目を閉じる。ぐるぐる体の中心が回っているみたいに。気分が悪くなって苦しいぐらい締め付けられる胸。

痛い。
でも何故か熱い。



(まただ……)



歩調に起きる症状。

とても大切な事が。絶対忘れてはいけないことが。ある気がして……私の中で何かが少しずつ剥がれていくような、そんな感覚に陥る。



記憶を失くした空白の三ヶ月間……。





「私は一体……何を忘れているの?」





答えは返ってこないまま、何にも思い出せないまま、いつも通り朝はやってくる。




/ 636ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp