第45章 捕らわれた未来(18)
暗闇の中___
「ひまりっ!!」
俺は突如吹き出した暴風の中、必死に叫ぶ。喉が張り裂けようが、潰れようがそんな事どうでも良かった。
「ひまりっ!!!!!」
遠くで鳴りだした雷の音。それに掻き消されないように必死に声を張り上げる。
「……は、なしてっ!!」
微かに聞こえたひまりの声を頼りに、俺は林を抜けある寺に辿り着く。するとそこにはひまりの姿も顕如達の姿まであった。
「家康っ!!!」
「ほぉ……呼ばなくても、そっちから来たか……やはりこの娘使えるな」
「顕如……今すぐ、その汚い手を離せ」
ひまりを羽交い締めにし、喉に刀を向ける顕如に、俺はゆっくり近づく……。
すると背後から数人の男が現れ、
俺を囲むように回り込んだ。
「こやつらは、落ちぶれた今川の残党でな……お前の首がどうしても欲しいらしい」
「……ひまりを返すなら、俺の首一つぐらいくれてやる」
俺には、ひまりの命と天秤にかけれるようなものは何一つない。
「なら……その場に刀を置け」
「だめっ!!私なら大丈夫だからっ!お願い逃げてっ!!」
必死にもがきながらひまりは声をあげ、刀を置く俺を止める。
「……まさか、今宵が徳川家康の最期になるとはな」
顕如は隣に居る黒ずくめの男にひまりを預け、刀を草むらに蹴り飛ばした。これで反撃は出来なくなる。けれど、他に方法はない。
「これでいいだろ……早くひまりを離せっ!!!!」
目の前で、顕如がニヤリと妖しい笑みを浮かべ……取り囲んでいた奴らが俺の方に、じりじりと歩み寄る。
「家康っ!!!!!!!!!」