第45章 捕らわれた未来(18)
その時だった___
暗い空が光り始めたのは。
ゴォォォォ………
ひまりが俺の名前を叫ぶのと同時。
唸るような雷電の音が響き……
地面に向かっていくつもの稲妻が走る。
そして、突如風がピタリと止まり……
薄気味悪いほど黒い空気があたりを張り詰めた。
「な、なんだこの靄は……」
信長様達もいつの間にか駆けつけていて、その異様な雰囲気にその場に居た全員が固まった。
「やっぱり……神様怒らせちゃったのかな……」
ひまりはそう言って、黒ずくめの男が手を緩めた隙に腕を振りほどき、後ろに下がる。
「やっぱり……だめ、なのかな?」
「ひまり…っ…」
ひまりの頬から涙が滑り落ちる……
「こんなに…す、き……なのに。こ……ん、なに…いっしょに、いた……いの、に……ま、だ…いっぱ…っい……伝えた、い…の、にっ……くっ……」
ほんと
勝手な神様だね。
ひまりはそう言って微笑む。
駆け出すのと同時に
俺の瞳から、
生暖かい何かが滑り落ちる。
「ひまりっ!!!」
黒い靄がひまりの身体を包むように
取り囲み……
ゴォォォォッッッ!!!!
「い、えやす……」
生きて。
必ず生きぬいて。
大好きだよ。
バイバイ。
ドォォォンッッ!!!!!!!!!
「ひまりっ!!!!!!」
伸ばした手は
空を切り……
霞んだ俺の視界に
月明かりに照らされた
小さな
黄色の花だけが
映った。
捕らわれた未来〜完〜