第43章 捕らわれた未来(16)
「一緒に居たいのっ!!離れたくないのっ!!」
「……君の気持ちは解ってる。だから俺なりに色々方法は考えたんだ。でも……」
「好きなのっ……こんなに好きなのにっ……どうしてっ?そんなの勝手過ぎるよっ……」
「まだ、三日だけ猶予がある……その間に何とかするから、泣かないで欲しい」
泣き崩れるひまり。
それを抱き止める佐助。
俺は目の前の光景を決して、
受け止めることは出来なかった。
夢であって欲しかった……。
「……い、ったい……何の話をしてるの?」
「……だから。佐助と一緒に俺を騙して楽しんでたんでしょ」
「何で佐助君と一緒に、家康を騙す必要があるのっ!!」
「故郷が一緒だって聞いた時に可笑しいと思ったんだ。あんたは一度もそんな話しなかったからねっ!!」
初めて大声を上げ、怒鳴る俺にひまりの瞳が大きく揺れる。想いあってから一度もひまりをそんな風に呼ぶことはなくなっていた。
ずっと名前でしか呼ばなかったのに、自分を見失う程の絶望を味わった俺にはもう、ひまりの心が見えなくなっていて……今までの思い出は。出来事は。
一切、俺の中から消えていた。
「何か勘違いしてるよっ!!私が好きなのは家康だけだよっ!!故郷の話をしなかったのは、色々事情があっただけでっ!!」
ひまりの瞳から溢れんばかりの大粒の涙が流れる。
「……俺には言えないことがあるんなら、あいつの所に行けばいいだろっ!!!」
「ちゃんと私の話を聞いてよっ!!」
俺にしがみ付こうとするひまり手を咄嗟に振り払う。
「……い、えやす」
「……頭、冷やしてくる」
どうして俺はこの時。
ひまりの話を聞かなかったのか。
どうして信じてやれなかったのか。
どうして手を振り払ったのか……。
不安、嫉妬、絶望、自分を見失い全部を吐き出した。
それぐらい俺は
ひまりを愛していた。