第43章 捕らわれた未来(16)
「言ったよね?ひまりは渡さないって」
「俺は欲しいものは必ず手に入れる主義だ……どけっ!!」
「……やっぱり、あの時殺しとくべきだったね。まぁ……今からでも遅くないけど」
「上等だ……かかってこい」
「手を組んで早々に荒ぶるのはやめて下さいっ!!」
刀を今にも抜きそうな上杉を佐助が羽交い締めで止め、
「私なら大丈夫だからっ!こんな所で喧嘩しないでっ!!」
鞘に手を掛ける俺をひまりが後ろから止める。
「ひまり……貴様とんだ悪女だな」
信長様の笑い声が空に響き、
「いつお二人はそんなに仲良くなられたのですか??」
と三成が最強のボケをかまして、ひとまず会合は終わった。
そして顕如達のアジトに乗り込む、
前日の夜___
「明日決行の段取りで、信長様に呼ばれたから行ってくる」
「うんっ!私、この羽織の綻び直して待ってるね」
針仕事の手を止めて顔を上げるひまりの髪を掻き上げ、俺は軽く唇を重ねる。ほんのり頬を染め、照れ臭そうに笑うひまり。
「……ふふっ」
まさか
この時交わした
口付けが
俺達にとって
最後になるとは
知らずに……。
夜風が吹き荒れた野原。
信長様に呼ばれた帰り道。少し足を伸ばせば、会話が聞こえた月の下。それは出陣する前日の夜に似ていた。