第43章 捕らわれた未来(16)
その夜___
戻ってきた信長様の報告を聞いて、俺と三成は考え込む。先に口を開いたのは、三成の方だった。
「……やはり、家康様に矢を射ったのは顕如の手下でしたか」
俺もそれに続くように口を開く。
「ひまりを誘い出し、上杉に攫わせ、戦の火種にしようと……」
「……築姫の件で、恐らくのひまり存在を知ったのだろう。前までは俺の側女だと勘違いしておったからな」
俺の方に視線を向けニヤリと笑う信長様を無視して、話を続ける。
「……春日山に武田信玄の腹心、真田幸村の姿を確認しました。やはり上杉と今は同盟を組んでいる様子」
「……なら、私達も同盟を組むというのはどうでしょうか?」
「…………」
三成の提案は微かに俺も考えていた事。
上杉に顕如で裏で仕組まれ、言いように利用されていた。とでも言えば向こうも話に乗る可能性は高い。今は休戦して、手を組み邪魔者を排除してからのがこっちも、向こうも好都合だろう。
「……家康、お前の意見は?」
「俺は……」
けど、手を組めば嫌でも上杉とひまりを会わせることになる。下手に安土に帰すと、また顕如が何か仕掛けてくる可能性も考えられなくはない。
(出来るなら側に置いておきたい)
「……家康、今は戦優先で考えろ」
俺の心情を見透かすような、
信長様の言葉に顔を上げる。
「……解っています。まずは、上杉にその事を伝えてから……何か条件をつけてくるかもしれません」
それから、話はとんとん拍子に進み……
案の定、上杉はひまりも話し合いに同行させ、一目会わせろという条件で手を組むことになった。俺達は境界の所で落ち合い、会合を行いながら作戦を立て終わると真っ先にひまりに会わせろと喚き出す、上杉。
「え、私っ!!」
炊き出しを手伝っていたひまりの姿を見つけ真っ先に駆け寄る上杉よりも先に、俺はひまりを背中で隠し睨みつける。ギュッと羽織を握るひまりの手は微かに震えていた。