第43章 捕らわれた未来(16)
陣地に辿り着き馬から下りると、
三成が一目散に駆け寄ってくる。
「家康様!ひまり様!」
「あっ!三成君っ、ただ、い……わぁっ!」
何を血迷ったか、いきなりひまりに抱きつく三成。俺は三成の襟元を思いっきり掴み引き離すと、低い声を出す。
「……三成。俺に殺されたいの?」
「すいません……つい、感情が高ぶってしまい……お二人共、おかえりなさいませ」
「ただいまっ!」
相変わらず胡散臭い笑みを浮かべる三成に、ひまりは満面の笑みで返事をする。
「三成君の笑顔はやっぱり癒されるね!!」
「……どこが。ひまりは騙されてるだけ」
俺がそう不貞腐れたように言うと、ひまりは両手を握りしめ頬を膨らませる。
「そんな事ないよっ!三成君の笑顔はエンジェル並みにすごいんだからっ!」
「(えんじぇる)とは、どういう意味ですか?」
ひまりが言った聞きなれない言葉に、三成は首を傾げる。少なからずそれは俺も同じで……俺も三成も文学の方は長けている方の筈だが、今まで一度もそんな言葉は聞いたことがない。
(えんじぇる……?何かの語呂合わせか?)
「私の国では、天使って意味でね!あっ……でも、天使も馴染みない言葉だよね……何て説明したら……」
う〜〜ん、と眉間に皺を寄せ口元に指を当てながら、悩むひまり。
(今、私の国って……)
「……とにかく、凄く優しくて癒されるって意味だよ!」
「それは、とても光栄ですね。ありがとうございます」
あっ!ひまりは何かを思い出したように声を上げると、俺の腕にそっと触れる。
「……あのね、謙信様に耳飾り取られちゃって……」
文の中に入ってなかったかな?
ひまりは申し訳なさそうに上目遣いで俺を見上げる。
「………はい」
抱き締めたくなる衝動を抑え、俺は懐に締まってあった耳飾りを渡す。するとひまりはふわりと笑って、良かった。と言いながら自分の耳に付けた。
「ふふっ……いつも家康の懐から返ってくるね」
耳飾り一つで喜ぶひまりを見て、俺は表情が緩む。故郷の話を聞くのは今度にしようと思い、今の状況を把握する為三成とその場から離れてた。