第6章 願い…
「い、えやす様は、私達を逃がすためっ、ご自分を犠牲にっ」
「……成り行きは解った。俺が直接あいつを助けに行く」
「しかしっ、信長様がじきじきに出向かれるのは危険です」
「……あいつの迷惑は昔から慣れている。すぐ、準備をいたせ」
その声に私はハッとして、信長様に駆け寄る。
「私もっ!私もっ行かせて下さいっ!」
「何を言っている。お前が行った所で足手纏いになるのが関の山だ」
「解ってます……でも、絶対に迷惑はかけませんっ!お願いしますっ!」
自分の無力さは自分が一番解ってる。でも、このままただ待つだけしか出来ないのは、一番嫌だった。
きっと、あの人はどんな痛みにも必死で一人で耐えて、一人で戦おうとしている。
少しでも力になりたい。
家康に会いたい。
その気持ちだけが、私の中を駆け巡る。
「……来るなら、必ず役に立て。行くぞ」
羽織を翻し、部屋を去る信長様の後を追いかける。
(どうか、どうか無事でいて……)
私は取れた耳飾りをギュッと握り締めながら、ひたすら祈り続けた。