第42章 捕らわれた未来(15)※R18※
案内された温泉___
湯けむりの中、私は冷えた身体を温める。ちょっと白く濁ったお湯がいかにも秘湯って感じがして、私は手でお湯を掬い上げ湯浴み着の上から浴びるように注ぐ。
静かな森に囲まれながら、
パシャパシャとお湯が弾く音が響く。
私は囲まれた岩に頭を乗せながら、疲れた身体を癒すように休めた。
(……髪、やっぱり切った方がいいかな)
片方だけ不揃いな長さになった髪を、指先で挟んで見つめる。別に伸ばしているわけじゃないけど、揃えるとなると大分髪を切らないといけない。
(あっ……腕。赤くなってる)
目に入った自分の腕を見て、思わずお湯で擦り付ける。
数刻前、謙信に掴まれた時に残った痣。
(家康が来てくれなかったら、あのまま……)
急に蘇った記憶をかき消すように、
私は頭を振り肩までお湯に浸かる。
パシャン……。
すると近くで水が跳ねる音が聞こえ、反射的に私は音がした方に視線を向けると……
湯気で見えにくかった視界が、
微かに吹き込んだ風ではっきり見えて……
「きゃぁぁっ///」
突然中に入ってきた家康に、私は自分の身体を隠すように抱え咄嗟に背中を向ける。
「……幽霊でも見たような反応しないでくれる?……結構、傷つくんだけど」
「だ、だってっ……!!家康、さっき今夜は貸切にしたからって……だからっ!だからゆっくり入っておいでって」
「……あのね」
「だ、だからてっきり……!」
だから、を繰り返す私。
背中から不機嫌そうな家康の声を聞きながら、パニック状態の私はもう自分でも何が言いたいのか解らなくなる。
するとすぐ側で水が跳ね、
その衝撃でお湯が揺れるのが見えた。