第41章 捕らわれた未来(14)
「ひまり」
柵越しに感じる温もりは
本物で……。
私に触れる腕は
決して幻なんかじゃなくて……。
「……い、えやす」
振り返る私の涙に
優しい指先が触れる。
「遅くなって、ごめん」
申し訳なそうに眉を下げる家康。私は涙でぐちゃぐちゃになった顔を必死に横に振り、柵の間から手を伸ばす。
(生きていてくれただけで……)
「……それ、だけ…で……!……きゃぁっ!!」
家康の顔に触れる直前、後ろから身体を思いっきり引っ張られ突然の事に足に力が入らず、そのまま私は床の上に転がる。
ガチャンッ!
再び鍵を掛けられ、閉じこめられた。
「家康っ!!」
「まさか死人に邪魔されるとはな」
謙信は不機嫌そうにそう言うと、家康の隣で柵にしがみ付く私に視線を向ける。
「続きは後だ。先にこやつの首を貰う」
「……何勝手なこと言ってんの。ひまりにそんな汚い手で触れた罪は……」
死んでも償えないから。
二人の間に、殺気だった空気が漂う。
家康の口調は、冷静な中に激しい怒りの熱が込められていて……見たこともないほど、すさまじい形相で謙信を睨みつけていた。
「三河成り上がりの割には……威勢だけは良いな」
「そんな下らない事言ってないで、死ぬ覚悟でもしたら?」
二人同時に刀を引き抜き、刃を向けあうように立つ。
「家康っ!!」
「……そこで待ってて。すぐ出してあげるから」
「……戯れごと言う暇などないぞ」
カキンッ!!