第39章 捕らわれた未来(12)
死因は不明らしい。
昨日、謙信はそう言った。
でも……
「私は絶対に信じない」
自分の目で確かめるまで、誰に何を言われても私は信じない。なのに……頭で何度そう思っても、心が付いてきてくれない。何度にじみ出した涙。また意思と関係なく止まることを知らない。
「……うっ……ひっ、く…っ」
「………まだ、泣いてるのか」
檻の扉がキィと開く音が響き、またすぐに閉まる音が聞こえ、私は膝に埋めていた顔を上げる。初めて中に入ってきた謙信に何故か胸騒ぎがして、頭の中で警告が鳴り響いたようにざわつき始める。
咄嗟に隅へと逃げようとする私の腕に、白い手が伸びてきて思いっきり振り払う。
「さ、触らないでっ!」
けれど狭い檻の中に逃げ場なんてなくて……すぐに冷たい手に腕を掴まれ、自由を奪われる。佐助君の上司だと聞いて、すっかり警戒心を忘れ安心していた私は、突然の出来事に必死に抵抗する。
「……あやつには、もう抱かれたか?」
言葉の意味が解らず、何でそんな事を聞くのかと思い、謙信の顔を見る。すると剣のように尖った瞳が、少しだけ熱を帯びているような気がして……
「……お前がどんな声で鳴くのか、興味がある」
その言葉に、より一層き嫌な予感が頭に浮かぶ。ゾワッと悪寒がして強張ったように、身体が動かなくなった。
(に、逃げなきゃ……)
そう思った時。視界がぐるっと回り、反転した私の背中に冷たい床がぶつかる。
「いやぁぁぁ!」
自分の身体が謙信に組み敷かれている事に気付き、大声を上げ足をバタつかせ、腕を動かし、身を捩る。
「煩い女はこの上なく嫌いだが……不思議とお前の声は嫌ではない」
「な、んで……なんでっこんなことっ」
まったく意図の読めない行動に、
焦りと恐怖と嫌悪感が襲う。