第39章 捕らわれた未来(12)
実はあの夜___
安土城に忍びこんだ日。
咄嗟に身を隠した俺は、家康公とひまりさんが抱き合い、キスをしている所を見てしまった。ひまりさんが信長様の養女になり、家康公の婚約者になった情報は知っていた。でもそれはただ、同盟を破断させる為だと思っていて……まさか本当に愛し合っているとは知らず、彼女が現代に帰らないと言った理由が、その時にようやく解った。
ーー俺は君の味方だから。
あの夜と同じ言葉を言うとひまりさんはありがとうとお礼を言った後、でも……と言って切なげに俯く。
ーー……家康にはもうこれ以上、危ない目に合って欲しくないの。
だから自力で何とかするから大丈夫!
ひまりさんは最後にそう言っていたけど、今回ばかりは謙信様のやり方に賛同する事は出来ない。
「……幸村は知らないから仕方ないけど、徳川家康は決してこんな時に亡くなってはいけない人なんだよ」
「は?何、意味わかんねーこと言ってんだよ」
幸村は眉間に皺を寄せ、
理解に苦しむように首を横に振る。
(この戦国時代を終わらせ、何百年も続く江戸幕府を作り上げた人)
そんな人がもし本当に亡くなったのなら……
未来が大きく変わってしまう。
どれぐらいこの国にとって、彼が偉大な人なのかを説明出来ないのが本当に残念だ。
そして何よりも、ひまりさんの為にも真実を知る必要がある。
「その内解るよ」
彼が生きてさえ居れば。
必ず来る、平和な未来が……。