第38章 捕らわれた未来(11)
春日山城___
「謙信様、失礼します!!」
「……何だ?信長でも動いたか?」
「はいっ!連絡が入り、信長が先陣を切る軍が今朝がたゆっくりですが、こちらに向かって出発したそうです」
「……クックッ」
思わず喉の奥から笑い声が溢れる。
俺は刀を抜くと、刃を指でゆっくりとなぞり指から赤い血が滴るのを見て、この上ない興奮に酔いしれる。
「私は絶対に、生きてここを出て行きます」
身体を震わせながらも、凛とした声でそう言い、俺を睨みつけた女……
(あんな女、初めてだ)
さすがあの赤鬼が気に入り、徳川が溺愛するだけあって……普通の女とは違う。
「………徳川も一緒か?」
怪我をしているとは聞いたが、最愛の女を攫われて黙っているような男には思えん。噂では徳川は、頭が切れ一本気で芯の強い男だと聞いた。そのくせ、変に癖のある男だとも……それには赤鬼も手を焼くほどだとな。
「……それが報告によると」
希望とゆう言葉が瞬時に消えるであろう報告に、俺は腹の底から笑いが込み上がる。