第37章 捕らわれた未来(10)
俺は目の前の男に、
産まれて初めて盾をつく。
「俺がひまりを助けに行きます」
「……昨日まで毒で犯され寝込んでいたお前に、一体何が出来る」
「…………」
鋭い目線が突き刺さる。
どんな厳しい言葉や視線わ突きつけられようが、俺は絶対に一歩たりとも引くことは出来ない。今、この時でさえひまりがどんな状況になっているか想像するだけで、それは生きている事よりも遥かに、耐え難いことだった。
「誰が止めようが俺は行く。例えその相手があんただろうと……」
俺は腰元の鞘を力強く握りしめ、跪いていた身体を起こす。深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出すと信長様の顔をまっすぐ見据え、俺はそのまま無言で背を向け歩きだす。
すると背後で……
シャキンッ。と、金属が触れる音が聞こえ……
「……俺の命に従わず、それでも行くと言うなら」
死んでから行け。
何の感情もない低い声。
刀が風を切る音。
そして……
「家康様っ!!」
三成の切羽詰まった叫び声が聞こえ、
俺は振り返った。