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イケメン戦国〜天邪鬼な君へ〜

第37章 捕らわれた未来(10)




「っ……!私は絶対にここから出て行きますっ!!」

「……威勢だけは良いようだが、声が震えているぞ」


謙信はそう言って私の手を柵越に掴み、自分の方に引き寄せると素早く刀を抜く……


「生意気なその口……切り落とされたいのか?」


ゾクッと鳥肌が立つほど鋭い瞳と刀の先が、間近に迫る。


「……私はこんな所で殺されるわけにはいきませんっ!」


咄嗟に腕を振りほどき、奥の壁まで下がると、負けじと睨み返す。

私が家康に何かあれば辛いのと同じで、私に何かあれば家康が一番辛い思いをしてしまう。

自分を責めて自分一人の責任にして、苦しんで追いつめてまた、自分の強さを見失ってしまう。




「私は絶対に、生きてここを出て行きます」




家康の為に、私自身の為に。

今度は声が震えないように、はっきりとそう私は告げる。すると、謙信は一瞬だけ表情を崩し刀を鞘の中に静かに収めた。


「ひまり」


(えっ……)


突然名前を呼ばれ、思わず警戒心を緩める。確かそんな名前だったな、と聞かれ私が静かに頷くと「また、来る」と、だけ言って去って行った。


私は一気に緊張が取れたように、その場に座り込む。そして誘われるように、眠気が一気にやってきて私は冷たい壁に身を寄せながら、目を閉じようとした時……




「ひまりさん」




牢番の人と入れ替わりで、現れた佐助君。そして幸の姿を見て、私は耐えていた涙が静かに頬を伝った。



「ここから出してあげる事は出来ない」


けれど



「俺は君の味方だから……」




佐助君の言葉は矛盾していて、よく解らなかった。けれど、それでも私の心を軽くするには充分な言葉だった。




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