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イケメン戦国〜天邪鬼な君へ〜

第5章 贈り物〜家康side〜


第五章「贈り物〜家康side〜」


捜索中だったひまりを襲った浪人のアジトを、昨夜やっと見つけた。準備が整い次第、乗り込む事を信長様に報告し終えた俺は、ある店を目指し一人城下町を歩いていた。


(……別に、あの二人に言われたからじゃないけど)


ーーあまり厳しいばかりだと、ひまりに嫌われるぞ?


ーー……確かに、時には飴も必要だ。


相変わらずお節介者の秀吉さんと光秀さんの二人をかわしながら、安土城を出て数刻……乱世とは思えないほど、賑わう城下町の一角に目的の店を見つける。俺はのれんを見上げ入り口の前で一旦立ち止まると、中に入るのを躊躇する。


(……別に好かれたいわけじゃない。ただ、バカみたい頑張ってるんだし、たまには労ってあげないとね)


言い訳でも言わないと、贈り物一つ買えない自分に、自分でも嫌気がさす。
俺は軽く息を吸うと、店の中に足を踏み入れた。


「これは、これは家康様。お久しぶりでございます」


本日は何をご所望で、と亭主に聞かれ一瞬戸惑いながらも……


「……女が好みそうなモノ。適当に見繕って欲しい」


「へっ?……は、はいっ!」


明らかにいつもと違う注文に、戸惑いながらも亭主は店の奥から、上等な箱を数個抱え、縁の上に広げた。


「姫君が好みそうな、装飾品をお持ちしました」


「…………」


俺は数ある中から、一際目を惹く薄黄色の耳飾りを手に取る。


「こちらは、腕の良い職人が丹精込めた作品でして、昨日仕入れたばかりの品でございます」


優しい色味の丸い玉が2つ。その中に小さな花が散りばめられ、繊細な作りになっている。


(……ひまりみたいだ)


ほど良い品があって、可憐で…柔らかくて…一度目にしたら、目が離せなくなる……そんな、雰囲気漂っていた。


「これを貰う」


「ありがとうございます。今、お包みいたしますので」


「いや、このままで良い」


俺は支払いを済ませ、耳飾りを懐にしまう。改まって渡すのは、柄じゃない。


「家康様が直々に足を運んで選ばれるなんて……きっと、素晴らしい方なんでしょうね」


笑顔で亭主に見送られ、俺は店を後にした。
急に外に出たせいか、光が眩しくて思わずに目を細める。
一瞬、この耳飾りを付けて笑うひまりの顔が、浮かんだ気がした。




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