第19章 友が為
血の匂いが充満する中、坂本は雅の背中に手を当てる。
「お、おい…!一体どうした…!?」
流石の坂本も取り乱して、苦しそうな雅に必死に声をかける。
一方、彼女の方は……
(まさか、こんなに早く…"副作用"が出るなんて……)
すると、隊士の1人が騒ぎに気付いたのか現れる。
「どうしましたか…!」
「おお!丁度良かった!今すぐヅラ達を呼__!」
トンッ!
「!」
隊士は唖然としてその状況を前にした。
吐血して弱っているはずの雅が、一瞬の隙を付いて、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
坂本の首の後ろを手刀で叩いて気絶させた。
バタンッ!
坂本はその場で倒れ込み、雅と
・・・・・・・
立場が逆になる。
「雅さん…!?何を…!」
雅は呼吸を整え、口元に付いている自分の血を拭う。
「……悪い。これ以上騒ぎになるわけにはいかなかったから、少々強引に対処した」
坂本がちゃんと呼吸しているか、口元に手を当てて確認する。
「い、一体…何が……」
呼吸の確認を済ませると、雅は良心の呵責が込み上げて、口元を歪ませる。
こんな状況で、桂と晋助達に勘付かれるわけにはいかなくて、咄嗟に手を出してしまった。
人体の構造からして、相手を一瞬で気絶させる方法もよく知っていたからな。
結果的に、人の事が言えなくなったってわけだ。
結局は、"てめー"(自分)自身の思い通りにするために、自分の力を使って相手を抑えつけた。
話し合いで事を納めようとした坂本の方がよっぽど大人らしくて利口だ。
馬鹿なのは私の方だ。もう到底、己を誇れる医者じゃなくなったな……
「雅…さん…?」
隊士が心配そうに声をかけて、雅は普段の冷静さを見繕う。
「私は大丈夫。此度の戦の時に、無理に治療した傷が開いただけだ」
その無理な治療というのは、半年前に使った"ある薬"と同じものだった。
厭魅と戦った際、"仮死剤"だと彼女は言ったが、正確に言えば、また違う名前の薬。
それは、天導衆が喉から手が出るほど求める"ある代物"。
地球をエネルギー体とも言え、彼女自身の体内にも宿る"生まれながらの呪い"でもあった……