第19章 友が為
「鬼兵隊は大将がいなくても充分優秀じゃ。何より、わしよりも、誰よりもおまんのことを知っている」
それに、雅にとっての薬は紛れもなくアイツじゃ。
だったら最もそばにおるべきなのは、わしじゃなく__
「それはダメだ…!」
バッ!
「!」
雅は間髪入れるように口を挟み、すかさず坂本との握手の手を離す。
「雅…?」
思わず坂本の顔色も変わる。
「どうし__」
「晋助だけは……アイツだけは巻き込むわけにはいかない。だったら、アンタに頼んだ方がまだマシだ」
無意識に早口になり、心の底から訴えるようにして言う。
「アイツにはアイツの
・・・・・・・・・
本当に護るべきものがあるんだ。それを邪魔したり、アイツをけしかけて巻き込むようなことをすれば殺す」
ザワッ
抑えられない感情が溢れるように見たことないくらい焦った表情をする雅に、坂本はたまげて目を見開く。
「おまん……」
ハッ
「……悪い。言い過ぎた」
雅は正気に戻ったのか、後退り距離を取る。
冷静さを欠いていたのを反省して、調子を戻そうとする。
医者である雅の口から「殺す」と向けられるのは、初めてだった。
そして一瞬だったが、殺気も感じられた。
それくらい……
「おまん……そんなに高杉に、惚れ込んでいるのか?」
「……」
しかし雅は怒る素振りも見せず、声を出す。
・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・
「これ以上、知られるわけにはいかないんだよ。特にアイツには…」
「?」
「本当は私__」
ドクンッ!!
!!?
「!?」
雅は急に口を押さえて蹲る。
ゲホッ…!ゴホッ…!
「!!」
途端、咳払いと共に足元の床に赤い液体がボタボタ落ちる。
「雅ッ…!?」