第19章 友が為
「金時と雅のやつゥ。遅いな~」
坂本が手の側面を額に当てるポーズをして、目を凝らした。
遠くまで視野を広げても、2人の姿が見当たらない。
「雅には銀時がそばにいる。それに援軍とももう合流しているはずだ。もうすぐで着くだろう」
桂は坂本の隣で諭した。
ここは拠点からそう遠くはない戦地で、桂含めた皆は一時休憩を取っていた。
高杉率いる鬼兵隊もそこにいた。
高杉は帰りが遅い二人を心配していた。特に雅のことを。
(雅……)
高杉は、彼女が最近“蠱毒”の治療に勤しんでいて、人一倍疲れているのをよく知っていた。
顔には出さないが、そのプレッシャーに連れて責任をいつも以上に強く感じていることも知っていた。
“抱き締めてくれ”なんてガラでもないことを頼んできたのは、それほど追い込まれている証拠なんだろう。
その後無理やり接吻したことを思い出し、高杉は頬を赤らめた。
口付けした時、彼女が漏らした可愛らしい声も。とろんとした翡翠色の瞳も…
(な、何思い出してんだこんな時に…!!)
「な~に考えてるぜよ高杉」
タイミング悪く、坂本が絡んできた。
「そんなに雅が心配か?」
しかもドンピシャ。
「うっせーな。天然パーマの奴は共通して癪に障る奴ばかりだな」
「なんじゃ?綺麗なサラサラ髪の雅は愛らしいと?」
「飛躍しすぎだろ。助走付けすぎて足首痛めらァ」
調子を狂わされ、高杉は頭を掻く。
「あ、おまんもサラサラだから、自分が好きなのかな」
「もういいその手の話は。自分が好きなんてナルシストじゃ……」
ピタッ
高杉はある言葉を思い出して、頭を掻く手を止めた。
『一番救いたかったものを救えなかった自分を、愛することなんて出来ないだろう』
あの時雅がちらつかせた悲しい目。
それも思い出してしまった途端に胸の奥が痛んだ。