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君想ふ夜桜《銀魂》

第19章 友が為



倒れていた仲間の1人が這いずって雅の足首を掴んだ。

「雅…さん……た、すけ…て」

呼吸困難で意識朦朧としながら訴える。

その目は幼い頃から見てきた、助けを乞う人達の目と同じだ。

手の震えが足首から伝わってくる。手首には火傷があった。

この者1人を助け出せば、間違いなく助けられる。

それとも、助かるか分からない銀時を救うか。己の都合で…私情で…

師を失った辛さがよく分かるからこそ、必ず死なせないと誓った。

白夜叉の戦力を優先したという口実を使って、他の仲間を見捨てるか?

(松陽…先生……)

松下村塾で銀時と松陽の姿を目にすると、自分と愁せんせーの姿が重ね合わさった。

今の銀時は、かつての私と同じだ。だから、私は……

「ッ!」

足に絡まっている仲間の手を振りほどいて、外へ走る。

後ろから爆風に煽られ、強制的に外へ脱出するような形で逃げられた。

銀時を庇うように雅が下になって、地面に不時着した。

「ッ!!」

成人男性並の体重の圧力が乗っかってきて、一瞬怯むも、雅は銀時を寝かせて、心音を確かめた。

トクンッ トクンッ

良かった。まだ息もある。急いでここから離れなければ。

(……)

見上げると、戦艦は火の船になっていた。

「……」

雅はしばらく見つめたら、銀時を担いでその場を離れた。

死神らしく冷血に仲間の死に背を向ける。いや、そうではない。


『貴様はもう…
・・・・・・・・
何も助けられない』

あの人の術を、あの人の“生きた証”を、あんな奴ごときに否定されてたまるか。

確かに私は助けられなかった。黙祷を捧げたって、私が仲間を見捨てた事実は消えない。

だが、“コイツ”(銀時)だけは……

(せんせー、

今がその時だ)


『……普通は使っちゃいけねェ。だが、“ある条件”を満たした時にだけ、お前は自分の判断を信じて使えばいい』


『条件って何…?』


『それはつまり……』


(大切な人を、救う時だ……)


銀時を蠱毒から解放させるには、“ソレ”しかない。

この先、私に死よりも恐ろしい未来があろうと、私は、奴らが未来を生きるための選択をする。

銀時に必ず、松陽を会わせるんだ。


雅は拠点に着くまでずっと唇を噛み続けた。

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