第14章 少女よ、大志を抱け
「でもそうかー。雅は一見無愛想で何も口出しせんイメージだが、そんな気配りはすんじゃな」
坂本は感心するように言った。
「……アイツはいつでも俺達を支えてくれたさ。なのに、自分のことはいつも後回しだ」
高杉は彼女のそんなところも気にかかっていた。
アイツは自分勝手のようであり、本当は誰より周りのことを気にかけている。
戦の最初の方では、野郎共は「何で女がいる」とくっちゃべっていた。
それとアイツの第一印象があまり良いとは言えなくて、周りは奴を受け入れなかった。
俺も最初はそうだったがな。
だからアイツは、自分なりに認めてもらおうと、それなりにガラでもねー気配りを覚えたのか。
「……なあおまんら」
坂本は、箸をおいてこんなことを聞いてきた。
「おまんらは、この戦が終わったらどうするんじゃ?」
『?』
いつもヘラヘラしているような感じとは変わって、何だか神妙そうになっていて、それが逆に不気味に思えた。
「何だよ急に。四者面談で進路相談でもしよってのか?」
「まあ進路と言っても、わしが気にかかるのは、おまんらとは違う別の奴ぜよ」
ここにはいない別の奴。
「雅のことか?」
桂がそう聞くと、坂本は黙って頷いた。
・・・・・
「わしらならこの先何があろうと、何とかなるじゃろう。じゃが、
・・・・・・
アイツは違う。たとえ根性があっても、この先苦労するのは想像つくじゃろう」
坂本は今まで雅のことをからかってはきたものの、彼女のことを1人の仲間として、人間として認めていた。
この世の中、女は男の二の次という考えが当たり前だ。
しかし坂本は、女など力量は知れているとか、女医などそんなもの必要ないとか、そんな言葉を浴びせる奴らとは真逆だ。
冗談以外、彼女が女であることに触れてこなかったが、今回は少し違う。
なぜなら、彼女を認めているからこそ、彼女の今後のことは心配でたまらなかったから。
なにより、
『私はこの戦が終わったら、遠い場所へ行く。アイツらとは、全くの別の道を行く』
坂本しか知らない、彼女が言った言葉。
戦が終わっても、彼女は孤独の道を進むつもりだ。