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君想ふ夜桜《銀魂》

第4章 疲れたときほど甘いものはウマい



「……」

雅がいなくなったあとも、高杉はしばらく満月を眺めた。

高杉は片手で頭を抱え、松下村塾のあの時を思い出した。


“試合楽しかった。ありがとう”


あの時は言葉と表情が真反対みてーだった。だが、さっき…

屋根から下りる直前、気のせいか…表情が少し穏やかに見えた

あの時の表情と今の表情を重ね合わさった

(“昔より話しかけやすい”か…)

ヅラはそう言ってたが、アイツの笑顔って言えそーなツラは見ねェのは変わらねーな…

実は高杉が、いや桂含めた皆が雅を気にかけていたのは少し訳がある。


(つくづく愛想のねェ女だ…)

昔からアイツはそうだった

先生はそんな奴を前から気にかけてたらしく、俺たちに「アイツと仲良くしてやってほしい」と頼んでいた

それで俺たちは奴と過ごすこともよくあった

戦力 それに医術の腕は誰より勝るが、
・・
“仲間”としては欠けるところがある

夜飯を食ったあと、皆が一杯やってる間も薬だの何だの作るのに部屋に籠もりっきり

それか負傷兵の手当てや看護ばかり

他の志士たちと、世間話だ無駄話をしてるとこも見ねェ

(必要最低限の付き合いをしねェというか…)

松陽先生がアイツを気にかける理由が何となく分かる

だからさっき驚いた
柄でもなく、誰かを誘うなんてな…


 “アンタが私の特別みたいになるから”


その言葉が、高杉の頭を過ぎる。

(別にそんなん望んじゃいねーよ)

てめーにどう思われようが俺は…

高杉も部屋へ戻ることにした。





〈寝床〉

そこには、寝てる奴らが何人かいた。

高杉の隣のヅラは、眼球カッサカッサの瞳孔全開で寝ていた。

「ぬ"~ぬ"~」

(なんつー寝顔だ。しかもよりによって、こっち見てんじゃねーよ)

その瞳孔見てると、吸い込まれそうな勢いだ…

銀時と初めてコイツの寝顔を見たとき、驚きのあまり大声を上げたっけか


高杉は布団を敷いて寝ようとしたら、ふと着物の小袋に何か入っていることに気付いた。

取り出してみたら、

(これは…)

さっき自分でしまった小さな御守りだ

戦で鬼兵隊の仲間の1人が、死にながらも俺に託した

高杉はそれをギュッと握り締めた。

(気を引き締めていかねェとな…)


高杉は桂に背を向ける形で布団に入り、眠りについた。

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