第4章 疲れたときほど甘いものはウマい
(!)
耳を疑った。
雅が俺を誘った?他の奴らに誘われても断るコイツが?
今までそんなこと…
「嫌なら、いい…」
なかなか返事が来ず、雅は一人でどこかに行こうと動き出した。
「待て」
高杉は呼び止めて少し考えた。
「何?」
雅がいつもの雅に見えなかった
泣いた面見たせいか、まるで…
とにかく、今俺がすべきことァ…
「冷蔵庫からヤクルコとってくるから待ってろ」
〈屋根瓦の上〉
何で屋根の上か
それは誰かに見られるとややこしくなると彼女の判断であった。(特に坂本)
それに、彼女に限らずみんなここをよく使う。
※アニメopのDAY×DAYでもそういうシーンあった…
彼女はその上で空をずっと眺めていた。
雲のせいで月が見えない
差し込む月明かりを見る限り、満月なんだろう
カサッ
ビニール袋の音が聞こえ振り向くと、高杉がヤクルコを持っていた。
「ヤクルコ。持ってきてやったぜ」
雅の隣に座り、ヤクルコを1つ開けてもう1つを彼女に渡した。
受け取った彼女は、すぐに開けず何故かそれを凝視した。
「…このヤクルコ、賞味期限は?」
「昨日買ったばっかだ。何で聞くんだ?」
ヤクルコごときに対して半信半疑で、すごく警戒心を抱いていた。
戦場にいる時と同じような、緊張感と心構えだ。
「先日の出陣の時、銀と…ヤクルコの賞味期限がどうとか、揉め合ってたのが聞こえてきたから」
(どんな耳してんだ?糸電話でも使ってたのか?)
雅は月明かりを頼りに、ヤクルコに刻まれている賞味期限を確認した途端ホッとした。
「銀みたいに…腹壊すのは勘弁…」
高杉は思い出し笑いし鼻で笑った。
「人のもん勝手に取ったんだ。ざまあねェな」
甘いものをあまり好まない彼女は、それを飲むと“おいしい”と感じた。
こういう時に限ってだからなのか。
確かに美味しいが、1つ気になることがあった。
「菓子って…普通茶じゃないの?」
隣の高杉はヤクルコを飲み干して、彼女の方に首を向けた。
「不満か?」
「いや…そうじゃない。
けど意外だ。アンタが誘いにOKするなんて」
高杉は呆気に取られた顔から、フッと笑い仕返しみたく言葉を返した。
「意外だな。お前が誰かを誘うなんて」