第8章 夜更けって怖いけど大人になった気分がしてワクワクする
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現在
日の光がちょうど瞼の上に差し込み、そっと目を開けた。
(もう朝か…)
そういや、深夜に廊下から足音が聞こえたような気がしたが…あれァ気のせいだったのか?
高杉は寝癖がついた頭に触れると、若干の頭痛を感じた。
昨晩の酒のせいか布団から出るのがしんどく、目が覚めてから10分ほどボーッとした。
周りを見渡すと、全く人がいなかった。
高杉は伸びをしてから手で押さえてあくびをした。
(あとで雅に、酔い止め貰うか)
宴会の翌日の二日酔いであら大変。そんな時は雅お手製の酔い止めである。
商人の辰馬に仕入れてもらうこともできるが、彼女はそれをよしとしなかった。
『材料があれば簡単に作れる。貴重な戦の資金を無闇に使うわけにはいかない』
節約を心掛け、ランチは外食ではなく手作り弁当で毎日頑張るOLのようだ。
しかし、彼女に手間暇かけることになると考えると、高杉はあまりいい気がしなかった。
医者である雅に周りはすごく頼り、雅はそれ以上に応える。
だが頼られるのは信頼とは別に疲労も溜まる。
実際、薬を貰おうとしてる自分も…
(今日は次に備えて、アイツも休まねェとな)
昨日ヅラが言ったように
高杉は寝室から出て、朝の眠気覚ましにヤクルコを飲みに台所の冷蔵庫へ向かった。
その途中、渡り廊下の曲がり角に差し掛かった時、妙な音が聞こえてきた。
和気藹々とした音楽。
(ぜってーどこかで聞いたことが。確か…)
音につられて進むと、外で志士たちが列になっていた。
『1・2・3・4・5・6・7・8!体を大きく延ばしましょう~!』
音楽のリズムに合わせて一斉に動いている。
(何してんだコイツら?)
いややってることは分かるが
普段はやってねェのに、どーいう風の吹き回しだ?
列の先頭にいる桂が廊下で突っ立っている高杉に気が付いた。
「おぉ起きたか。今ちょうど皆でラジオ体操をしてる。お前もどうだ?」
と聞きながら、リズミカルにすごくノリノリでやっていた。
その様子と問いに対し、高杉はNOだ。
「今日は少し大仕事をやるからな。体はしっかりほぐしておけ」
「あ?何をやるんだ?」
高杉は首を傾げて尋ねた。
「久しぶりに大掃除をしよう!」