第8章 夜更けって怖いけど大人になった気分がしてワクワクする
(……クッ。だ、ダメだ)
暗闇の中、苦しみもがく。
(この衝動。気のせいと思いたいが、昔感じたものと同じだ)
目をギュッとつぶり布団を握り締め、何とか抑えようとしても、体が全く言うことを聞かない。
様子を見ても、一向に収まる気がしない。
(ッ!やっぱり無理…だ。もう…耐えられない…)
布団から体を勢いよく起こし同時に心の中で叫ぶ。
(誰かァァ!一緒にトイレ行って下さーーい!)
銀時の下腹部は、限界まで達してた…
頭を抱えて一旦冷静になる。
(ヤベェ!調子乗って飲み過ぎた…
いい歳して夜中にトイレも行けねーなんて)
寝る前にお手洗いに行かなかったのが敗因だった。
ほんの少し気を抜いたら、今にも漏らしそうだ
朝目を覚ましたら、布団がやけに塗れてる感触と俺を囲んで笑ってやがる野郎どもの顔を想像するだけで俺ァ…
(くそッ!出したいのはくそじゃねーが)
言うまでもなく銀時は根からの怖がり。
10年後でも新八たちに呆れられるなんて、大人げない。
初めてのおつかいで、成長しようと頑張る子どもたちのことを見習ってほしいものだ。
周りを見渡すも、一緒に行ってくれそうな生存者も確認できない。
(辺りもすげー真っ暗だし、他の奴らも酔いつぶれてぐっすり眠ってやがる)
無理言って辰馬にお願いしたこともあったが、ソイツも案の定夢の中
自分は緊張のあまり汗をかいていた。
それで少しでも水分を出して尿意を無くせればと思っても、現実はそうならない。
(グッ…!こ、こうなったら、目隠ししてでも行くしか…)
それはかえって怖い気が…
決死の覚悟をして立ち上がり、自分の着物の袖を握り締め目的地へ向かった。
このあと、恐ろしい影が潜んでることも知らず
〈渡り廊下〉
月明かりもなく、虫の音が少しだけ救いになる。
銀時は薄暗い中厠に向かって歩く。
(チクショー。何でこんな時に限って、前聞いた怪談話を思い出しちまうんだ)
こんな戦ばかりの日々でも、夏では恒例の肝試しや怪談もよくやるのだ。
ガタンッ!
(!!)
明らかに気のせいではない大きな音が鳴った。
驚いて足を止めたと同時にあの言葉が脳内に浮かぶ。
『そうやっていつも人をからかってたら、幽霊とか出るよ』