第2章 おにぎり国広
何度も深呼吸し、気を取り直してモニターの電源を入れなおす。
先程と変わらずに山姥切がそこに移っているが、私はそれに構わずに素早く近侍を変える。
この状態で一体誰を・・・一瞬躊躇いはしたものの、ここはやっぱり長谷部だろう。
この状態で他の人にコンタクトを取るのは嫌な予感しかしない。
「全く、俺の言葉を最後まで聞かないからですよ」
・・・近侍に任命した時の台詞、違うでしょ。
見慣れた長谷部の姿に少し安心するが、
よく見ると彼の涼しい口元に少し笑みが浮かんでいる。
「あのさ、私の本丸、これからずっとこうなの?」
「こう、とは?」
「だから、こう皆と会話が出来るっていうか見られるっていうか」
「ええ、嫌なら以前と同じように接することも可能ですが。ですが、コロコロ替えられてはこちらも困ります。一度決めたらもう変えられないと思ってください。どうします?」
文字通りモニターの前で頭を抱える私。
色々恥ずかしいけど、こんな経験は他ではできないだろう。
何より、単に二次元のブラウザゲームだと思っていたものが私だけに語り掛けてくれるのが嬉しかった。
「・・・今後ともオネガイシマス」
「承知いたしました」
「これって今まで通りゲーム勧めていいんだよね?」
「何を言っているんですか。遊びではありません。戦ですよ。さ、今日の演習相手はどこの本丸ですか」
私の本丸で一番頼りないのは、私自身だった。
「それで、次は誰と会話を試みるんです?」