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【イケメン戦国】時をかける妄想~

第12章 二人の宝物 三章


美しく咲き誇る桜と共に
産声を上げた二人の宝物。

名は、光慶(みつよし)。

現代で言うイヤイヤ期を迎えた
もうすぐ三歳になる元気な男の子だ。


「いーやーよーー!」

今日も今日とて、視察に出掛ける
光秀の足にしがみ付いていた。

「こら、光慶。父上が困ってるよ。」
凛が窘めながら、引き離そうと
小さな身体を引いてみるが
どうにも離れない。

チラリと光慶が見上げると
クククッと愉しげに笑う光秀の顔。

「こまやない!わらってゆー!」

「え?あ、うーん‥でも困ってるのよ?」
光秀さんも困った顔をして下さい!と
凛も光秀を見上げる。

「俺よりお前の方が困っているようだが。」
溢れる笑みを隠すことも無く、
行かせまいとしがみついている
光慶をヒョイと抱き上げる。

「寂しいか、光慶。」

自分によく似た金の瞳に
涙を浮かべて小さく頷く息子。

「それは結構な事だな。」

「みつもいくのー!」
ついにうわーんと泣き始めた光慶に
フッと口端を上げる光秀。

「あまり困らせてくれるなよ。」
凛、光慶の草履を用意しろ、と
光慶の頭を撫でる。

「‥いいんですか?」
(絶対ダメだと思ってた‥。)

「ああ。こうも煩いと敵わん。」
クククッと喉を鳴らす光秀を見て
安心したように泣き止み、
光慶は嬉しそうに笑った。




「夕刻には戻る。」

「いってちます!」

しっかりと手を繋いだ二人を
送り出して大きく伸びをする。

「‥―はあ。行っちゃった‥。」

突然与えられた一人の時間と
手が離れた嬉しいような
寂しいような複雑な感情を持て余す。

成長するにつれ光秀の後ろを
追いかけまわすようになった光慶。

相変わらず何を考えているのか
わからない事も多いが、
光慶と戯れている時の光秀は
どこか穏やかに見える。


「良いお父さんだね。」

「私もそう思う‥って!佐助くん?!」

いつの間にか隣に立つ佐助は
何食わぬ顔で、おはようと挨拶する。

「凛さんの顔を見に来たんだ。」
久々に安土で任務があるから、と
光秀に劣らないポーカーフェイスで呟く。

「そうなんだ。あ、お茶でもどう?」
時間持て余しちゃって、と凛が
困ったように笑うと

「じゃあ、頂こうかな。」
佐助も同じように微笑んで見せた。

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