第12章 二人の宝物 三章
「‥っ!‥わあ」
流れるように移り変わる景色と
顔を上げて、初めて知る風の心地よさ。
秀宗は目をキラキラ輝かせて
感嘆の声を溢した。
「父上っ!凄いっ!」
太陽の光に照らされた草原が
目の前に広がり、頬を風が撫でる。
「そうだろ?」
政宗がどこか誇らしげに微笑むと
秀宗は満面の笑顔で大きく頷いた。
「よしっ!じゃあ跳ばすぞ!」
と、手綱に力を込める政宗に、
「こら!政宗!」
調子に乗らない!と嗜める凛。
「やったー!」
喜ぶ忠宗が馬上で両手を上げると、
「ぼ‥僕、まだちょっと怖い~‥」
再び泣きそうな表情になる秀宗。
「まあ、そういうな秀宗!」
何事も楽しめ!と言う政宗の声を合図に
政宗の馬が勢いよく駆け出す。
「ち、ちょっと政宗!?」
慌てて凛も速度を上げ
政宗の馬に並走する。
わいわいと家族で言い合いながら
しばらく草原を走り
見晴らしの良い丘で馬を止めた。
「すごーい!」
丁度、城の裏手にあるこの丘からは
青葉城下が一望出来る。
空は快晴、降り注ぐ優しい陽の光に
周りの草花もキラキラと輝き、
先に馬から降ろした子供たちも
楽しそうに走り回っていた。
「秀宗、忠宗。馬に水をやってくれ。」
ほら、と水筒をそれぞれに渡し
近くに繋いだ馬を任せて
政宗は降ろした荷物を木陰に広げる。
「凛、手伝ってくれ。」
「うんっ!」
包みの中の重箱を開け
政宗が腕を振るって作った
色とりどりの料理を所狭しと並べていく。
「美味しそう~!」
さすが政宗だね!と微笑む凛に
政宗はニヤリと笑って見せた。
「美味しそうじゃなくて、美味いんだよ。」
「わあー!父上のご飯だー!」
「はやく食べよう!」
水やりを終えた秀宗と忠宗が
勢いよく駆け寄ってくる。
「おう、食え。たくさんあるからな。」
「頂きまーす!」
「ほらほら、秀宗。ご飯粒ついてるよ。」
「おい、忠宗!野菜も食え!」
子供達が思い思いの料理を取り、
幸せそうに頬張る姿を見ながら
政宗と凛は、
顔を見合わせて微笑んだ。