第3章 【R18】交差する想い
宵も深まり始めた刻。
天守に続く廊下を、手に持った蝋燭の
ぼんやりとした灯りを頼りに歩く。
―――いつもの道のり。
「天下人の女になる気はないか?」
私は、その言葉通りに
天下人の"女"になった。
ただの愛玩用の"女"
信長様の欲を満たす為だけの道具。
信長様と毎夜のように繋がる
この関係はそれ以上でも以下でもない。
「失礼致します‥。」
静かに襖を開けると、ゆったりと座り
愉しげに盃を傾ける愛しい人の姿。
「‥入れ。」
その声は、低く、心地よく
心の真ん中に重く響く。
静かに襖を閉め、中に入る。
月光に照らされた信長様は
息を飲むほど美しかった。
「‥こちらに来い。」
その声に導かれるまま、信長様の傍に
そっと腰を下ろす。
クっ‥と盃を空にして、盆に置く。
その仕草にさえ、胸が高鳴る。
誰よりも強く、誰よりも気高い。
それゆえに誰も愛さない信長様。
全ては己の大義の為の駒。
それは、わかりきった事なのに
この人に愛されたいと願ってしまう。
――私は、どうしようもなく
この人が‥‥‥好きだ。