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【イケメン戦国】時をかける妄想~

第11章 二人の宝物 二章


日差しが照りつける夏。
空には大きな入道雲が浮かび、
蝉の声が遠くに聞こえる。

安土城からほど近い光秀の御殿で
凛が暮らし始めて一年。

祝言は挙げたものの、光秀は
隠密としての仕事が多く
なかなか御殿に帰ってこれない
日々が続いていた。


中庭を臨む縁側に腰掛け
今朝、早馬で届いた文を開く。

"早くお前のマヌケな顔が見たい。"
いい子で待っていろ、と締められた文には
あと二日程で安土に戻るという
知らせが綴られていた。

「マヌケって‥。」
と、苦笑いを浮かべるものの、
数日ぶりに会えることへの嬉しさから
だんだんと頬が緩んでくる。



「‥はやく会いたいな。」

からかったり、意地悪ばかりだが
その分、目一杯甘やかして
たくさんの愛情をくれる光秀に
日に日に愛しさが膨らんでいく。


会えない日々は、寂しくないと
言えば嘘になる。

ただ、離れただけ光秀への想いは募り
一緒に居られる時間がとても大切で
とても幸せだと感じていた。



「‥どんな顔するかなあ。」

離れている間に交わす文には、
凛は身の回りの出来事などを
文に書く事が多かったが、
一つだけ言えていない事があった。




それは、

二月程前から月のモノが来ていない事。

最近は食欲も落ちてきて、
ふいに目眩や嘔吐感に
襲われる事も増えた。


「ヤる事はヤってんだね。」

まさか妊娠とは思わず、
家康に風邪薬を貰いに行った時
子供ができてる‥と思う、と
家康に言われた事を思い出す。

その時、光秀は安土に居らず
帰ってきたと思ったら
数日後にはまた他国へ
出向いてしまい、話せていなかった。


「喜んでくれるかな‥。」
期待と不安がグルグルと渦巻く。

とても文だけで簡単に言える事でもなく、
どう伝えたものかと頭を抱える。




「‥ダメダメ!」
不安を振り払うように頭を振り、
立ち上がると空を見上げる。

凛は、どこまでも高い夏の青空と
眩しい日の光に目を細めた。


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