第2章 どこまでも
【おまけ】
「家康も凛も遅いな。」
ソワソワと広間を歩き回る秀吉。
「クックック‥察しろ、秀吉。
家康も溜まっていたのだろう。」
可笑しそうに笑う光秀。
「溜まっていた?洗い物でしょうか?」
それならば私もお手伝いを‥と、
立ち上がる三成を政宗が制する。
「ほっておいてやれ。それよりも‥」
チラっと膳に置かれた器を見やる。
そこには凛が作った夕餉がある。
見た目も美しく、出汁のいい匂いが香る。
それに最も気になるのは、真っ赤な汁。
「これはなんという食べ物だ?」
手に持った扇をパシンっと閉じ、
上座に座る信長が問う。
「これは麻婆豆腐というものです。
出汁と唐辛子、その他の調味料で
豆腐を煮たものです。」
数多の文献を読破してきた三成が
天使の微笑みで答える。
「唐辛子‥。猿、食してみよ。」
「はっ!」
信長の手前、勢いよく返事をしたものの
目の前には未知の食べ物。
秀吉の目に戸惑いが生まれる。
「どうした‥?猿?」
信長の目が面白そうに細められる。
ゴクリと秀吉が唾を飲む。
「ほう‥俺の命が聞けぬか‥。」
「‥‥いえっ!」
震える手をぐっと握り、箸を取る。
周りの武将達も固唾を呑んで見守っていた。
‥‥パク。
‥‥‥。
‥‥‥。
「お、おい。秀吉?」
政宗が恐る恐る様子を伺う。
「‥‥か‥‥。」
「か?‥蚊ですか?」
三成が辺りを伺う。
「‥‥辛いーーー!!!!!!」
広間は顔を真っ赤にした秀吉の
絶叫に包まれていった。
END.