第10章 ピースのカケラ
ついた場所は、私たち3年が、一番使うトイレ。
それも男子トイレ。
「なんで、トイレ?」
「そのうち分かるよ」
船越くんはそう言うと、
私をトイレの個室に押し飛ばした。
小さく悲鳴を上げると、
船越くんはいつもより、
トーンが低い声で言った。
「なぁ佳奈?
…アンタ黒尾のこと好きなの?」
私はテツのこと好きなのかな?
考えたことないって言ったら嘘になる。
…けど、わからない。
私はテツのこと好きなの?
「答えろよ」
「分からないの…
私はテツのこと好きなのかどうか。」
「嘘「嘘じゃない!」
私は船越くんに声を被せながら言う。
私はつい、声を荒らげてしまい、
口を手で抑えた。
「気に入らない。
アンタのそう言うとこ。
…そこ座って?」
船越くんが、指さしたのは便座。
正直座りたくない。
けど今は、しょうがない。
…すわろう。
私たちの空気とは違い、
元気のある鐘の音がトイレに響いた。