第1章 嫌われ者の入学
さっきコーラを投げつけた生徒たちはもうほとんどいなくなっていた。
もう学校が始まる時間なのだ。
なら、取るに足らないクズを___一瀬家の連中を、いつまでもからかっていても仕方ない、とでも思ったのだろう。
「……深夜、そろそろ学校始まる」
「スイちゃん、そんなこと気にするタイプだっけ?」
「……まったく」
「あは、だよねー、まあ僕達一応柊家なんだから大丈夫でしょ」
「……わたしは一応じゃないんだけど」
そんなことを言いながらも、深夜は一瀬グレンたちのほうを見ながら微笑んでいる。
「さて、と。そんじゃ、力試しといきますか」
そう言うと、ふいに手を上げる。
その指先にある呪符が燃えて消える。
一瞬で一瀬グレンの目の前に現れて、そしてそいつが吹っ飛んだ。
彼の従者であろう2人の女子が駆け寄るのが見える。
スイはその様子をぼんやりと眺めながら、深夜に話しかける。
「……深夜、気づいた?」
「もちろん」
「……わざとだったね」
一瀬グレンは明らかにあの札に気づいていた。
にも関わらず、逆方向を見て、そしてまともに攻撃を食らった。
わざと自ら当たりにいった、としか思えない。
先ほどの従者がこちらを指さして何か言っているが、多分あれも演技だ。
「……もしかすると、ね」
「うん、もしかすると一瀬グレンはなかなかに強いかもね」
「……まあこれから3年間で分かるでしょ。そういやクラス表見た?深夜」
「見てないけど」
スイは珍しく微笑んで言った。
「一瀬グレンと同じクラスだよ」
さぁ、これから3年間どうなるのだろうか。
このころはまだそんな呑気なことを考えていた。
世界の終わりが近付いている、とも知らずに______