第1章 嫌われ者の入学
【柊side】
「ねえ」
少女は隣に立っている青年に声をかける。
「何だい?スイ」
スイ、と呼ばれたその少女は、無表情だったその顔を少ししかめた。
「……ここに私がいる意味、ある?」
そう言うと、青年のほうは驚いたような顔をして、そして笑った。
「今更何いってんの〜、せっかく来たんだからもうちょっと待ってようよ」
「……だるい」
「またそんなこと言って」
「……だって本当にだるいんだもの。というか、深夜が無理やり連れてきたんでしょうが」
どうやらその青年は深夜というらしい。
「人聞きの悪い言い方しないでよ。それにスイだって気になるでしょ?一瀬家の奴がどんなのか、さ」
「全く持って興味ない」
「あらら」
二人は先ほどから、自分たちが入学する学校の門に立っている。
例の一瀬家のやつとやらを一目見るためだ。
深夜はノリノリな様子だが、スイのほうはどうでも良さそうだ。
「はぁ……何でこんなめんどくさいことになったんだろ……」
それはさかのぼること1時間半前。