• テキストサイズ

柊家のもう一人の天才【終わりのセラフ】

第3章 新入生代表


【一瀬side】



講堂には、全校生徒が集められていた。




「……人が多い」


グレンの後ろにいるスイが呟く。



「あは、相変わらず人混みがダメだね、スイは」


深夜がそんなことを言って苦笑いしている。





生徒たちは楽しげだった。

新しい生活に期待し、しかしこれから始まる競争に不安になって、口数が多くなる。



講堂の舞台では、校長の長い挨拶が終わろうとしていた。



「君たちは選ばれた生徒です。ここに残る者は、将来、『帝ノ鬼』の中でも幹部候補として迎えられる可能性のある、光の卵です。そのことを胸に、誇りを持った、楽しい学生生活を……」



そんな話をさっきから長く、続けている。



するとそこで突然、



「ねぇ、一瀬グレン。ちょっと私の質問に答えなさい」



などと、横から声をかけられる。


するとそこには、セーラー服を着た少女がいる。おそらく隣にいるということは、同じクラスの生徒なのだろう。


気の強そうなつり目気味の瞳に、赤い髪。白い肌。



「いま、俺に話しかけたか?」


グレンは答える。


すると女は、少し馬鹿にするような顔で言う。



「汚らわしい一瀬家の人間が、あなたの他にいますか?」


「汚らわしい、ねぇ」



その言葉にグレンは笑う。

それから女を見て、言う。



「そう言うお前は、誰だよ?どこの何様だ?」


グレンはこの女が誰なのか、おおよそ見当はついていたが、あえて無知を装おう。

女はもちろんそんなグレンに気づくわけもなく、



「はっ、やはり一瀬家の者は、無礼な上に、無知ですね。この髪を見て、私のことがわからないだなんて」





おそらくこの女は、十条家の人間だ。

曰く付きのその赤い髪を見れば、すぐにそいつは、柊家につかえる旧家の中でも、五本指に入る名家である十条家の者だとわかる。

だがグレンは、そのことを知らない体で話を続ける。

アイドルか何かか、などと言われた相手の女は、かなり怒っている。



「ああ、きーきーうるせぇな。じゃあお前はいったい誰なんだよ」
/ 19ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp