第3章 新入生代表
【一瀬side】
講堂には、全校生徒が集められていた。
「……人が多い」
グレンの後ろにいるスイが呟く。
「あは、相変わらず人混みがダメだね、スイは」
深夜がそんなことを言って苦笑いしている。
生徒たちは楽しげだった。
新しい生活に期待し、しかしこれから始まる競争に不安になって、口数が多くなる。
講堂の舞台では、校長の長い挨拶が終わろうとしていた。
「君たちは選ばれた生徒です。ここに残る者は、将来、『帝ノ鬼』の中でも幹部候補として迎えられる可能性のある、光の卵です。そのことを胸に、誇りを持った、楽しい学生生活を……」
そんな話をさっきから長く、続けている。
するとそこで突然、
「ねぇ、一瀬グレン。ちょっと私の質問に答えなさい」
などと、横から声をかけられる。
するとそこには、セーラー服を着た少女がいる。おそらく隣にいるということは、同じクラスの生徒なのだろう。
気の強そうなつり目気味の瞳に、赤い髪。白い肌。
「いま、俺に話しかけたか?」
グレンは答える。
すると女は、少し馬鹿にするような顔で言う。
「汚らわしい一瀬家の人間が、あなたの他にいますか?」
「汚らわしい、ねぇ」
その言葉にグレンは笑う。
それから女を見て、言う。
「そう言うお前は、誰だよ?どこの何様だ?」
グレンはこの女が誰なのか、おおよそ見当はついていたが、あえて無知を装おう。
女はもちろんそんなグレンに気づくわけもなく、
「はっ、やはり一瀬家の者は、無礼な上に、無知ですね。この髪を見て、私のことがわからないだなんて」
おそらくこの女は、十条家の人間だ。
曰く付きのその赤い髪を見れば、すぐにそいつは、柊家につかえる旧家の中でも、五本指に入る名家である十条家の者だとわかる。
だがグレンは、そのことを知らない体で話を続ける。
アイドルか何かか、などと言われた相手の女は、かなり怒っている。
「ああ、きーきーうるせぇな。じゃあお前はいったい誰なんだよ」