第8章 ー生ー
まるで永遠のようだった…
我が子だと言うことも忘れ、細い身体を穿つその姿は、最早ただの獣と化していた。
僕はこの悪魔の子…
だから僕は悪魔なんだ…
智は父を…、そして我が身を呪った。
いつ明けるかも分からない夜を怨んだ。
やがて智にのしかかった獣がぶるりと身体を震わせ、歓喜の雄叫びを上げようとした、その時…
地を這うような雷鳴が轟き、その直後、雨空を裂くかのように稲光が走った。
蝋燭の灯だけが揺らめく蔵の中が、一瞬真っ白に変わる。
その瞬間、断末魔の叫びを上げた獣は、背中から血飛沫を撒き散らせ、床を這った。
「おのれ…よくも…!」
そう言ったきり、ぴくりとも動かなくなった獣の先には、蒼白になった顔面を血で染め、蹲る潤の姿があった。
「じゅ…ん…」
夢でも見ているんだろうか…
智は恐る恐る声をかけ、弛緩した腕を潤に向かって伸ばした。
すると潤ははっとしたように顔を上げ、床を這うようにして智の元へと駆け寄った。
「智…、智っ…」
穢され、血に塗れ、それでも尚雪のように真っ白な智の痩身を、潤は力の限り抱きしめた。
今にも途切れそうな息を吐く唇に、思いの丈をぶつけるように口付けた。
愛してる…
愛してる、愛してる…!
業火が二人を飲み込もうとするのさえ厭わず、二つの身体が溶けて混じり合うまで愛し合った。
やがて二つの魂は一つの光となり、天へと昇って行った。
二人の愛を阻む物など何も無い、ただただ抜けるような青空の向こうへと…