第7章 〜空〜
「さあ、坊っちゃん…手を合わせましょうね…」
渋々、翔は指し示された墓の前に座ると、手を合わせた。
「なむなむ…」
暫く大人しく手を合わせていたかと思うと、くりっとした目を照に向けた。
「これは誰のおはかなの?」
「坊っちゃん…」
潤と…智をここで一緒に眠らせるのだと言ったのは、翔だった。
「覚えていらっしゃらないんですか…坊っちゃん…」
「ん…?」
「翔坊っちゃんっ…」
照のあまりの剣幕に、翔は泣き出した。
「おてる…嫌…怖い…」
翔の身体が、墓の通路の泥濘に倒れ込んだ。
「嫌っ…嫌っ…おてるが怖いっ…」
「坊っちゃん…ああ…」
泥にまみれて暴れる翔を、照は止めることもできずにその場に泣き伏した。
”翔くん―――”
びくりと翔の身体が震えた。
”忘れたふりなんかしても、無駄だよ”
翔が怯えた目を空に漂わせた
その目が、何かを捉えた
「ゆる…して…」
~空~ 完